【建築計画】伝熱・結露
〈伝熱現象〉
伝熱現象には大きく分けると下記の3つがある。
- 伝導
- 対流
- 放射
〈伝熱〉
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熱貫流
壁の一方の空気から、反対側の空気へ熱が伝わること。
(熱伝達 → 熱伝導 → 熱伝達)
熱伝導率、熱伝達率、熱貫流率の違い/ 汚泥乾燥機, スラリー乾燥機, ヒートポンプ汚泥乾燥機 | KENKI DRYER
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熱伝達
壁体の内部で、一方の表面から他の表面へ熱が移動すること。
熱伝達 = (対流熱伝達) + (放射熱伝達)
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対流熱伝達
空気(流体)から壁の表面へ、又は壁の表面から空気(気体)への熱の移動をいう。
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放射熱伝達
直接放射による熱の移動をいう。
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熱伝達率
空気から壁の表面へ、又は壁の表面から空気へ熱の伝わりやすさ。
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壁の表面にあたる風が大きいほど、熱伝達率も大きくなる。(熱が伝わりやすい)
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熱伝導率、熱伝達率、熱貫流率の違い/ 汚泥乾燥機, スラリー乾燥機, ヒートポンプ汚泥乾燥機 | KENKI DRYER
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熱伝達抵抗
空気から壁の表面へ、又は壁の表面から空気へ熱の伝わりにくさ。
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壁の表面にあたる風が強いほど、熱伝達抵抗は小さくなる。(熱が伝わりやすい)
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室内側より、風が強い屋外側(外気側)の方が熱伝達抵抗は小さくなる。
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熱伝導
壁体の内部で、一方の表面から他の表面へ熱が移動すること。
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稠(ちゅう)密な個体や静止している流体(気体や液体)の中では、熱伝導のみが生じる
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熱伝導率
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建築材料の熱伝導率は、一般に密度の高いものほど、熱を伝えやすくなる。
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木材の熱伝導率は、グラスウールの3〜4倍程度。
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「熱伝導比抵抗」が大きいということは、熱を伝えにくいということ。
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熱量
単一の材料からなる壁を伝わる熱量は、
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壁の両面の温度の差、時間、伝熱面積に比例する。
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伝わる壁の厚さに反比例する。
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熱放射
物体から他の物体へ直接伝達される熱移動現象。
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放射の強さは、その物体の温度と表面の状態によって決まる。
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対流
流体内での熱移動
<その他>
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熱損失係数
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建築物の断熱性能や保温性能を示す数値として用いられる。
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断熱性、気密性が良いほど、熱損失係数の値は小さくなる。
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比熱
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比熱が大きいほど、温めるのに多くの熱を必要とする。
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容積比熱
物質1㎥の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量。
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熱容積
熱容量 = 比熱 × 質量
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物質の熱容量が大きくなると、熱の吸収による温度上昇と、放出による温度降下が遅くなり蓄熱という現象が生じる。
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<断熱>
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断熱
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空気層(中空層)
中空層の熱抵抗の値は、各種条件により異なる。
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密閉度が高いほど熱抵抗は大きくなる。
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一般に厚さが2〜3cmまでは熱抵抗は増加、それ以上少しずつ減少となる。
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アルミ箔
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アルミ箔は、放射率が小さく、吸収率も小さいので、壁体表面に張ることによって放射による伝熱量を少なくすることができる。
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壁体内の中空層(両面・片面)にアルミ箔を張ると、断熱性は高くなる。
(中空層での熱の伝熱は、主として放射と対流により行われる。アルミ箔を張ることによって、放射による熱の伝熱を低減させることができる。)
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断熱材
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一般にグラスウールなどの断熱材は、水分を含むと、熱伝導率は大きくなる。
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グラスウールなど空気を含む断熱材を用いた場合、外壁の断熱層内に通気が生じると、直接冷気が侵入し外壁の断熱性が低下する恐れがある。
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断熱材の厚さを増やせば、熱を通しにくくなり、屋内への熱の流入は減少する。
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外壁を緑化すると、日射熱の吸収は減少し屋内への熱の流入を防ぐ。
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外壁などの断熱層内に外気や室内空気が侵入すると、断熱性が低下する恐れがある。
一般に「材料」はかさ比重(見かけの密度)が大きいほど熱伝導率が大きくなる。
しかし、「グラスウール」などの繊維質の断熱材は、かさ比重が大きいほど熱伝導率は小さくなる。
(かさ比重が大きいほど、断熱材内部の隙間が小さくなり、空気が移動しにくく、伝熱が小さくなるため)
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かさ比重
内部の気泡を含む材料の重量を外形寸法(見かけ)で割った値。
見かけの密度ともいう。
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〈断熱性〉
- 「外断熱工法」は、断熱材などを躯体の外側に張り付けて、躯体全体を覆うように施工する工法のこと。ヒートブリッジとなる部分ができにくく、結露防止に有効。
- 「内断熱工法」を用いると、構造体は直接外気温の影響をうけてヒートブリッジができやすく、蓄熱効果を活用しにくくなり、室温の変動が大きくなる。
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ヒートブリッジ(熱橋)
断熱性が劣る場所で、夏季は受熱量が増し、冬季は損失熱量が大となる箇所。
冬季にはこの部分が冷えて結露しやすくなる。
- 断熱性が高い方が熱貫流量が小さくなるため、暖房停止後の室温の低下は緩やかになる。
- 外壁の断熱性および気密性を高めると、熱が逃げにくくなる。その結果、窓からの日射により、上昇した温度は外気に放射されにくくなり、室温の上昇は大きくなる。
- 住宅の断熱性を高くすると、熱貫流量が小さくなり、冬期に床や壁などの表面温度と室温の差が小さくなるので、室内の上下温度差は小さくなる。
低放射ガラスを用いた複層ガラスは、日射の遮蔽に効果があるので、普通ガラスの複層ガラスに比べ、熱貫流率が小さくなる。(断熱性が低い) -
コールドドラフト
冷気が窓に沿って降下すること。
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冬季の冷えた窓付近の空気は急激に冷却され降下し、床付近を冷やす。
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- 鉄筋コンクリート造の建築物において「内断熱工法」を用いると、構造体は直接外気温の影響をうけてヒートブリッジができやすく、蓄熱効果を活用しにくくなり、室内の変動が大きくなる。
- 「外断熱工法」を用いると、外気温の影響をうけにくくなり、構造体の蓄熱効果を活用しやすく、室温の変動を小さくすることができる。
- 外壁の断熱性を高めると、外部からの熱貫流量が小さくなる(熱が伝わりにくくなる)ため、暖房負荷も冷房負荷も減少する。
- 一般に、「材料」はかさ比重(見かけの密度)が大きいほど熱伝導率が大きくなる。しかし、「グラスウール」などの繊維質の断熱材は、かさ比重が大きいほど熱伝導率は小さくなる。(かさ比重が大きいほど、断熱材内部の隙間が小さくなり、空気が移動しにくく、伝熱が小さくなるため)
<壁体の内部温度分布>
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コンクリート
コンクリートなど、断熱性能が小さいものは熱を伝えやすくなる。
- 屋外と屋内の温度差は小さくなる。
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断熱材
- 断熱材など、断熱性能が大きいものは熱を伝えにくくなる。
- 屋外と屋内の温度差は大きくなる。
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ガラスウールなど空気を多く含む断熱材を用いた場合、外壁の断熱層内に通気が生じると、直接冷気が侵入し外壁の断熱性が低下する恐れがある。
- 断熱材の厚さを増せば、熱を通しにくくなり、屋内への熱の流入は減少する。
- 外壁を緑化すると、日射熱の吸収は減少し屋内への熱の流入を防ぐ。
- 鉄筋コンクリート造の建築物において「内断熱工法」を用いると、構造体は直接外気温をうけてヒートブリッジができやすく、蓄熱効果を活用しにくくなり、室温の変動が大きくなる。
- 「外断熱工法」を用いると、外気温の影響をうけにくくなり、構造体の蓄熱効果を活用しやすく、室温の変動を小さくすることができる。
- 断熱材など、断熱性能が大きいものは熱を伝えにくくなる。
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空気層(中空層)
- 中空層は熱抵抗の値は、各種条件により異なる。
- 密閉度が高いほど熱抵抗は大きくなる。
- 一般に厚さが2〜3cmまでは熱抵抗は増加、それ以上少しずつ減少となる。
- 中空層は熱抵抗の値は、各種条件により異なる。
〈結露〉
- 暖房室の空気は、非暖房室の空気よりも一般に多湿となるため、この空気が非暖房室へと入り込むと冷やされて、結露が生じやすくなる。
- 夏期の地下室においては、室内の気温や外周壁面の温度が低いことが多いため、換気をすることにより高温多湿の外気が入ると、結露が生じさせることがある。
- 壁を構成する材料の厚さや熱伝導率の値を変更せずに、材料の配置を変更しても、壁体の熱貫流率は変化しない。そのため、空気層の位置を変更しても室内側の壁面温度は変わらず、表面結露の防止には効果はない。
- 床下結露には、室内からの侵入した水蒸気や地盤から水蒸気が、冬季の冷たい床板に触れて結露するものなどがある。
〈結露防止〉
- 外壁の室内側に生じる表面結露の防止には、外壁の断熱性を良くし、「室内側の壁面」の「表面温度を上げる」(露点温度以上)ことが必要。
- 壁体の「内部結露」は、室内の高湿空気が壁の内部に流入した結果生じる。そのため、断熱層の室内側(高湿側)に防湿層を設けることによって結露を防ぐことができる。また、断熱層の屋外側に通気層を設けることによって、壁体内部の高湿空気を外部に逃すことができ、壁の内部結露を防ぐことができる。
- 窓下に放熱器を設置すると、加熱器からの温かい空気が上昇し、ガラス面を温めるので、窓面の結露防止に効果がある。
- 冬期、室内側は高温高湿状態となるので、「二重サッシ」の内側サッシの気密性を高くする。外側サッシの気密性を高くすると、二重サッシの内部に結露が発生しやすくなってしまう。(高温多湿の部屋の空気が二重サッシの内部に入り込むため)
- ガラス窓にカーテンを吊るすと、カーテンによりガラス面への空気の対流が阻まれるため、ガラス面の温度が一層低下し、かえって結露が増大する恐れがある。
- 結露は、ガラス窓や壁などの室内側表面が、空気の露点温度以下になると生じる。したがって、室内の「表面温度」を上昇させると、室内の表面結露を生じにくくなる。
- 開放型石油ストーブは、燃焼時に室内に水蒸気と二酸化炭素を排出する。そのため、室内の湿度が高くなり、結露が生じやすくなる。
- 断熱性の高いガラス(複層ガラス)を用いると、ガラス面の温度が低下しにくくなるため、窓面の表面結露の防止に効果がある。
- 換気を行うと、乾燥した外気が流入して室内の湿度が下がるため、窓ガラスの室内側の表面結露の防止に効果がある。
- 雨戸を閉めると、雨戸と窓の間に空気層ができ、ガラス面の温度が低下しにくくなるため、窓面の表面結露の防止に効果がある。
- 室内側の壁付近に、タンスなどの気流を妨げる物を置くと、湿気が滞留して表面結露が生じる恐れがある。
- 小屋裏結露の防止は、室内の湿気が小屋裏に入らないよう天井面での防湿を行い、小屋裏に入った湿気を排出するため十分な換気口を確保する。
- 保温性の高い建築物であっても、暖房室の空気は、非暖房室の空気よりも一般に多湿となるため、この空気が非暖房室へと入り込むと冷やされて、結露が発生しやすくなる。
〈色による日射吸収率〉
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「長波長放射」((遠)赤外線)
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吸収率が高い(=反射率は低い)
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「短波長放射」(日射、可視光線)
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色によって異なる。
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白には吸収率が低い(白には反射率は高い)
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黒には吸収率が高い(黒には反射率は低い)
(吸収率が低い = 反射率が高い)
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外壁材の屋外表面に白ペイントを塗ると、日射の短波長熱線を遮る効果がある。
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〈ガラスの日射透過率〉
- 一般的な「透明板ガラス」は、「赤外線などの長波長域(3000nm以上)」はほとんど透過しない。
- 「可視光線の短波長域(380〜780nm)」はほとんど透過する。
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可光透過率
光の波長ごとの透過率。
〈換気〉
- 計画的換気を行う場合、換気の経路を明確にする必要がある。そのため、すきま風などを防ぐために、住宅の気密性を高める必要がある。
〈その他〉
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絶対湿度
乾燥空気1kg中に含まれる水蒸気の重量 -
水蒸気圧
湿り空気の全圧のうち、水蒸気の分圧
絶対湿度が同じであれば、空気を冷却しても、水蒸気圧は変化しない。